灰かぶりONEMAN LIVE 2024
大寝不足前夜
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2024年12月21日、Spotify O-nestにて開催された灰かぶりのキャリア初となるワンマンライブ「大寝不足前夜」。余韻で眠れなくなる夜をテーマに作られた本公演は、その名の通り寝不足になるほど特別な夜となった。
会場に入ると、まず目を引くのはステージに置かれたベンチと、23時59分をさす時計だ。ドラムやアンプなどは草花で覆われ、明らかにいつもとは違う非日常空間が期待を高めていく。
会場BGM「舞踏への勧誘」に合わせ場内アナウンスが流れる中、定刻に。舞踏会を彷彿とさせるオープニングSEと共に時計が照らされ、ステージに現れるメンバーを歓声と拍手が出迎える。
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「大寝不足前夜へようこそ!」。
そんな坂根(Vo.)の一声によって始まったのは1曲目「Hameln」。一気にオーディエンスを灰かぶりの世界へと連れ去り、そのまま「二人夜行」へ。大サビの歌詞を「二人で」から「俺らで」に変えるアレンジは、会場全員で大寝不足前夜を作り上げる宣言として響き渡る。
続いて、ピアノの不穏な旋律と共に始まる「Hammers」。ほとんどライブで披露されたことのないこの楽曲が、満を持して異質な存在感を放つ。原曲にはないクラップも煽られ会場の一体感が高まる中、ダークな雰囲気から打って変わって「FanFare」へと突入。メンバーも笑顔を見せ、「足音」という歌詞に合わせてステップを踏む様子は、今日という日を祝しているようにも見える。
ここで「こんにちは、ドラムの永田雄大です!」と溌剌とした声。永田 (Dr.)のMCが始まった。アットホームな空気感でトークをする永田のMCもまさにワンマンならではのこと。
そして永田のタイトルコールから始まった「ハナウタ」ではすっかり風物詩となった坂根と田中(Ba.)による「あっち向いてホイ」に拍手が起こる。温かい雰囲気のまま、続く「寿命」では坂根がジャンプを煽り、ミラーボールが光り輝くダンスフロアと化していく。
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そんな「寿命」から間髪入れず歌い出すのは「いえずじまい」。真っ白な照明の中で鳴り響くこの楽曲は灰かぶりのシリアスな表情を存分に引き出し、思わず会場も息を呑む。「死ぬ時にどうせ、全てさようなら」というフレーズで「いえずじまい」を終えた後、「生きろよ、なるべくね」と生きることへの肯定を謳うのは「トロンプルイユ」。一人一人に訴えかけるように歌う坂根に、オーディエンスが呼応していく様子は決して錯覚ではなかった。初披露となる「うたたね」では会場を優しく包み込み、灰かぶり流の「夜との付き合い方」が詰まったセクションで前半戦は終了。
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そして「O-nest 盛り上がってますか〜!」という横山(Gt.)の叫びと共に後半戦が幕を開け、「アウトラップ」へ。横山の鋭いカッティングは多くを語らずとも一気にオーディエンスのギアを上げ、続いて楽器隊によるインタールードから「Bubble」に。原曲では田中のソロのみだが、この日は永田と横山のソロも加わり個々のプレイが映える構成に。そして本来アコギで紡がれるアウトロがピアノによる可憐で繊細な旋律にアレンジされ、壮大なスケールで「ガラスケース」に繋がる。坂根がベンチに腰を掛け、時に感情を露わにしながらも丁寧に歌い上げていく。
「ガラスケース」が美しく幕を閉じたかと思えば、ここで突然カーニバルを彷彿とさせる軽快なSE。「楽しんでますか?」と坂根の呼びかけに会場も大きな声で応えていく中、「次はみんなで"会いたい"という言葉を歌いたい。」とコールアンドレスポンスの練習から始まったのは「フレグランス・フレンズ」。サビで向けられたマイクに全員で歌う「会いたい」には、この日を待ち望んでいたメンバーとオーディエンスの気持ちがギュッと詰まっている。そして、勢いそのままにアウトロからノータイムで「極、寒寒」へ。ライブではすっかり定番曲となったキラ ーチューンに会場のボルテージは上がり続け、サビでメンバーと共に飛び続けるフロアはまさに絶景である。
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ライブも最終盤に差し掛かる頃、波の音と共に始まったのは初ライブと初自主企画でのみ演奏された未発表曲「ペンと瓶」。この曲の披露もまた、今日がメモリアルな日であることの証明だ。そのまま坂根の弾き語りから「暗転の果て」で大団円へ。灰かぶり随一のロックチューンは大寝不足前夜のアンセムとして堂々と本編を締め括った。
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鳴り止まないアンコールの中、メンバーがグッズを見に纏いステージに再登場。
この日唯一撮影OKが伝えられ、始まったのは「桃源郷」だ。スマホを構えながらでも体を揺らし、拳を上げ、口遊みたくなるのがこの曲の魅力。
続いて、主催ライブ恒例となった田中のグッズ紹介と自主企画「七五三」の発表へ。会場が温かい空気に包まれる中、坂根は「まだ小さいバンドなのに見つけてくれた貴方たちはすごいんですよ。信じてもらったからには貴方たちの生活のお守りになりたいなと思います。これからもよろしくお願いします。」と語り、最後を飾るのは「貴方日和」。ライブならではの長尺アウトロで会場は一つとなり、美しい景色と共に大寝不足前夜はフィナーレを迎えた。「またやろうね!」の声と共にメンバーが退場していく中、ステージにはガラスの靴があしらわれたネックレスが残され、鐘の音と共に公演は幕を閉じていく。0時を越えて魔法が解けてもまた会いたい、そう思わざるを得ない夜がそこにはあった。
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